水晶大戦人物列伝 (2007/12/21)

先頃、水晶大戦の最中に記されたと目される人物評が、ジュノのジャンク屋の古びた木箱から発見され、研究者の間で話題を集めている。今回は、その一部をご紹介しよう。

露営の公子 ヴァレンラール・R・ダヴィル

Valaineral R Davilles(835 - )
サンドリアの近衛騎士団長(※1)。アルディエーヌ
公(※2)。現国王デスティンの従弟にあたる。
温厚篤実な人柄で知られるが、類稀な剣術の才を
もち、軍事にも明るいため、名君ランペールの気質
をもっとも色濃く受け継ぐ王族といっても過言では
ない。

そのため、先王グランテュールが暗殺された際には、
その後継として、口数が少なくお世辞にも社交的と
はいえなかった当時のデスティン皇太子よりも、眉
目秀麗で神童の誉れ高いヴァレンラールを推す声
の方が大きかった。しかし、再び王国が二分するこ
とを憂えた彼は、いち早く皇太子支持を表明。擁立
派の策動を未然に防いだ。

以後、デスティンの信頼を得たヴァレンラールは、
858年、公爵という高位にありながら、請われるまま
近衛騎士団長の任を拝命。王城の警備に心血を注
いでいた。しかし、水晶大戦が始まった今は、王家
の旗を戦場に翻して兵の士気を鼓舞するため、草を
しとねとする日々が続いているようだ。

天眼の銃手 エリヴィラ

Elivira Gogol(835 - )
国防会議での過激な発言から「鉄血の淑女」の異名をもつバストゥーク第1黄金銃士隊の長。

銃砲の量産化で財を成したゴーゴリ家の長女として生まれたエリヴィラは、なに不自由ない幼少期を過ごした。しかし、勝気な性格もあり、勝手に婚約者を決めた父コンドラトに激しく反発。無断で徴兵傭兵局に出頭して、軍歴をスタートさせた。

共和軍団兵に採用されてから1年後、皮肉にも幼少の頃にたしなんでいたトカゲ狩りで父に鍛えられた銃の腕を買われ、黄金銃士隊に編入。入隊後は、狙撃手としてよりも戦術家として頭角を現し、黄金銃士隊の本領である敵地の鉱床奪取に次々と成功。弱冠25歳にして筆頭黄金銃士隊長にまで上りつめた。これを機に父とも和解し、その生涯最高の傑作「アナイアレイター」を譲り受けている。

無宿の奇傑 ハジャ・ゾワン

Haja Zhwan(843 - )
ウィンダス連邦に加勢する傭兵集団のひとつ、山猫
(ワイルドキャット)義勇団を率いている傭兵。
頬にミスラ族の伝承に登場する大女王ビゼヤの末裔
の証とされる豹紋が浮かんでいることで知られる。

連邦軍の実質的な中核であるミスラ傭兵団や義勇団
※3)の中でも、最大の勢力を率いているため、
ハジャは連邦最高機関である元老院議会への出席を
特例で許されている。しかし、傍若無人で、時に恫
喝をも交えるハジャの態度に、反感を抱いている元
老院議員も決して少なくないようだ。

島国ゾワの出身であるハジャが、オルジリア大陸で
それだけの兵を集められた背景には、豹紋の影響も
さることながら、公式には水晶大戦への不干渉中立
を表明しているゾワの宗主国アトルガン皇国の何ら
かの意向が働いているのではないか、と噂されてい
る。

Illustration by Mitsuhiro Arita

※1:近衛騎士団
王城防衛のために設置されていた精鋭騎士団。ある理由で水晶大戦後に大幅に兵力を削減され、近衛騎士隊として再編成された。

※2:アルディエーヌ
エルヴァーン族がクォン大陸に移住する以前に住んでいたとされる伝説の地。アルディエーヌ公はその領有を意味するサンドリア最高の爵位のひとつだが、実質的な所領はないため、伝統的に傍系王族に箔付けとして与えられることが多い。

※3:ミスラ傭兵団・義勇団
主にミスラ族から構成されるウィンダスの傭兵組織。王蛇傭兵団、大鰐傭兵団といった元海賊の古参の集団と山猫義勇団、猛虎義勇団といった大戦勃発後に南方から渡来した新参の集団とに大別することができる。戦後、統廃合され、4つの傭兵団に再編成された。