青魔道士(2006/04/13)

不滅なる蒼き獅子

世に曰く、力と引き換えに
魂を捨てさりし人であると……

世に曰く、聖皇の命により
存在を許されし魔であると……

アトルガン皇国の聖皇を護る。ただ、それだけのために存在する無敵の準軍事組織「不滅隊」。決して敗北を許されない彼らが、魔物に抗する力を得んと、長年の研鑚を重ねて編み出したジョブ、それが「青魔道士」である。

蒼黒の戦衣ジュバを身に纏い、鮮碧の湾刀キリジを佩く異能の魔法剣士は、魔物の魂を喰らって進化を遂げることから、彼らより「蒼き獅子」と恐れられる存在だ。そして、同じ人間からでさえも……。その血塗られた歴史と忌むべき魔法を、ここに紐解こう。


青い血の記憶

目には目を……
剣には剣を……
魔には魔を……

〔バルラーン聖典より〕

かつて、キメラ(合成獣)の反乱によって引き起こされた皇太子暗殺事件は、時の聖皇バルラーンの心胆を寒からしめるのに十分であった。屈強な近衛兵も老練な宮廷魔道士も、彼らの前では無力であったからだ。

キメラを生み出した当事者であり、対抗手段の構築を至上命令とされた錬金術師たちが、最後に行き着いた結論……。それは、衛兵自体を魔物(モンスター)と化すことであった。早速、忠実で健康な臣下が集められ、魔物の肉体を移植する施術がなされた。しかし、ある被験者は顔から無数の触手が生え、また、ある被験者は醜いゲル状の肉塊と化し、ほとんどの試みは失敗に終わった。たとえ、秘術で拒絶反応を抑えることはできても、魔物の血に人間の血が侵蝕されてしまうからだった。

そこで、立案された最後の手段。それが、ウィンダスより伝わった魔法の力を援用し、人間の精神に直接魔物の魂を投射する荒技であった……。「青魔法」の誕生である。


禁断の魔法

青とは、魔物の血の色であり、
我々の未来の血の色でもある。
我らに明日があればの話だが……

〔さる不滅隊の手記より〕

青魔法とは、人間の限界をはるかに超える強大な魔物の力を一時的に得、その技を擬態する魔法である。
だが、人の姿を保ったまま、魔物の技を駆使するのだ。無論、肉体的な負担は計り知れない。しかも、魔法の投射によって魔物の魂を移植する方法(これを不滅隊では「魔を喰らう」という)は、肉体的なアクシデントこそ減じたものの、心を魔物に侵されてしまう危険性が増していたのだ……。改良を重ねたにも関らず、史上、不滅隊に天寿をまっとうした者が皆無であることが、その痛苦を如実に物語っている(「不死なる者」を移植した結果、死ねなくなってしまった者ならいるようだが……)。

魔物の魂が喚起する恐怖と魅惑を抑えこむ、強靭なる精神。そして、己が明日を捨ててでも目的を果たさんとする、断固たる覚悟。この双方を備える者のみが、青の力を用う者、すなわち「青魔道士」となることができるのだ。

Illustration by Mitsuhiro Arita