チョコレート・ミッション (2011/01/25)

もうすぐヴァレンティオン・デー。
大切なあの人に。
あなたの想いを届ける贈り物は準備できましたか?

今年のヴァレンティオンこそは素敵なプレゼントを。
ヴァナ・ディールの片隅でも、そう考えて準備を始めた冒険者の青年がいるようです。

彼女と知り合ったのはヴァレンティオン・デー。
年明け早々にその彼女と喧嘩をしてしまった。

長い黒髪を飾る若草色のリボンが、彼女にはとても似合っていて、いつも綺麗だと思っていた。
女性の衣服は常に誉めてあげるものですよ、と友人が言っていたから。

「それ、いつものリボンだね? 前から思っていたんだけど……」

肝心の誉め言葉を告げる前に、彼女の顔つきが険しくなった。

今年初めてあなたに会えるからって、新しいのをつけてきたのに。

「ちゃんと見もしないで言っているのね。ひどい」
「ええと、ちょっと待って。何かとても誤解があるんじゃないかな?」

まさか、グリーンリボンが、高品質のグリーンリボンに替わっていたなんて思わなかったよ。

「今日はケアルあげない」
「えええ!?」
「プロテスも、IIだから」
「ええええええ!? せ、せめてIII!」

実際にはちゃんと癒してくれたけれど。パーティの中ではケアルの回数が1回少なかったような気がする。
そこで、仲直りのきっかけにチョコを贈ることにした。
ヴァレンティオン・デーはふたりにとって思い出の日だし。きっと受け取ってくれるはず。

もちろんチョコは「手作り」だ。
伊達でパティシエの技を身に付けてはいない。
チョコの風船と言われるバブルチョコ。それは中が空洞になっているチョコでふわふわと宙に浮かばせることができる。
そのバブルチョコを、きれいなハート型に仕立てあげたものを見たことがあった。

あのチョコを贈ろう。

職人たちが作業の片手間に食べるチョコラスクを口にしてがんばった。チョコで味付けたラスクは、集中力を増してくれて細かい作業を続けるにはぴったりなのだ。甘いモノは頭の栄養に良いらしい。

完成までに、何個のバブルチョコを作ったかは思い出したくない。
ラスクを食べに食べたけれど、幸運は味方してくれず、ハート型になってくれなくて。
十個、二十個、三十個とふつうのバブルチョコだけが増えていった。
百個を越えたところで数えるのを止めた。
こうなったら意地もある。

明け方近くにようやくハート型のチョコが完成した。
食べまくったチョコラスクと、捨てられずにお腹の中に入れるしかなかったバブルチョコのおかげで、なんだか胸焼けもする。

きれいにラッピングしたチョコをあげると、彼女はようやく笑顔を見せてくれた。

「はい。仲直りね!」

少し頬を赤くしつつ、後ろ手にもっていた羊皮紙に包まれた箱を差し出してきた。
開けてみると……。ミスラストーンだった。不思議な力が宿っているというベルトだ。

「付けてあげる。ちゃんと長さもあなたに合わせて……あれ? あれれ?」
「く、苦しい! むりだよ!」

この8日間。冒険もせずに、チョコラスクとバブルチョコを食べ続けた結果、彼女の贈り物がきつくて入らなくなっていた。

「これが身に着けられるようになるまで、仲直りはおあずけです!」

厳しい顔で告げる彼女。

甘くて、ちょっぴり苦いヴァレンティオン・デーだった。


Story : Miyabi Hasegawa
Illustration : Mitsuhiro Arita

開催期間

2011年2月1日(火) 17:00頃から2月15日(火) 17:00頃までを予定しています。

モーグリの出現場所

イベント期間中、以下のエリアにモーグリが出現します。モーグリから詳しいイベント内容を聞くことができますので、話しかけてみてください。

・南サンドリア(J-9)
・北サンドリア(D-8)
・バストゥーク鉱山区(I-9)
・バストゥーク商業区(G-8)
・ウィンダス水の区(北側F-5)
・ウィンダス森の区(K-10)