ひんがしの侍の男伊達 (2011/04/21)

男児の健やかな成長を願うお祭りとしてすっかり定着してきた練武祭。
いよいよ始まるクポ!

今年は、ちょうど中の国に技術交流にやってきていたひんがしの国の刀鍛冶が、太刀の演舞を見せてくれることになったクポ!

「ほぉ。あなたは、侍でもあると?」
大工房の主であるシドにそう訊ねられ、ひんがしの国の刀鍛冶であるシノはつい頷いてしまった。
彼とともに国からやってきた鍛冶師仲間たちまで、「こやつは凄腕の侍ですぞ」などと余計なことを並べ立てる。
とんでもないことになった、とシノは思った。
その腕前をぜひ見せて欲しい、と乞われてしまったのだ。
自分たちは技術交流の大使としてバストゥークにやってきたはずなのに。

練武祭の始まりの日。
大工房の一階、二台の昇降機と鍛冶ギルドの間にある吹き抜けの大広間には、黒山の人だかりができていた。
「か、かようなところで技を見せろというのですか」
大広間に十重二十重となってシノを囲んでいる人の数は生まれた村の全員よりも多い。
刀を打つのならば誰にも負けないと胸を張れるのだが……。

「本当にこれでよろしいのですか?」
頷いて、シノは譲り受けた木刀を構える。
腰に差している剣は実戦のためのものだから使わないつもりだった。
取り巻いている人々の視線を感じる。
男も女も、子どもも年寄りもいる。ひんがしの国の代表として無様なところは見せられない。

シノの演舞が始まった。
明鏡止水を心がけつつ身体を動かしてゆくうちに自然と心は研ぎ澄まされていった。
壱之太刀・燕飛から始め、弐之太刀、参之太刀と型を披露してゆく。

だが、シノが最後の型に入ったところで息をつめて見守っていた観衆たちからざわめきがあがったのだ。
「兄ちゃん、ダメだよっ」
直後、「きゃあ」という悲鳴とともにまろび出てきたのは、まだ七つか八つのヒュームの女の子だった。
彼女の後を追うようにしてばらばらと何かが降りそそぐ。
花火だ。シノにはすぐにわかった。回転花火の冥府独楽。その数、十あまり。
転んだ女の子の周りに火のついた花火が降り注いで、いっせいに跳ね回り始めた。
彼女の後ろで真っ青になった少年が立ちすくんでいる。
このままでは火傷をしてしまう!

考える前にシノの身体は動いていた。
木刀を放り出し、腰に提げていた刀へと手が伸びる。
「いやぁあああ!」
その場にいた者たちがどよめいた。まるで女の子に斬りかかったかのように見えたからだ。
だが──次の瞬間、どよめきは歓声に変わる。

目で追うのも困難な速さで跳ね回る花火の数々。しかしシノの刀は、跳ねる花火のひとつひとつを正確に斬りつけていた。演舞のときの比ではない速さで切っ先が動いている。
かすかな湿った音を立てて火が消え、独楽の動きが止まる。
抜けば玉散る鋼の刃。シノが腰に差していた太刀は水の力を宿した名刀、村雨だったのだ。
青白く輝く刀身が薄暗い広間の中で閃き続けた。
またたく間に全ての花火を斬ってのけた。歓声が喝采になる。
少女をシノが抱えあげると、青ざめていた少年が泣きだした。

いたずら心だった。
シノに向かって投げるつもりだったのだと兄は言い、ごめんなさいを繰り返した。
泣く妹をあやしながら、シノは兄に向かって片膝をつきながら目を見て諭した。
「わたしは良い。まず、妹御に謝りなされ。いちばん怖い思いをしたのはこの子だ」
澄んだ瞳の侍の言葉がゆっくりと兄の心に染み込んでゆく。
「ごめん……」
「お兄ちゃん」
二人は抱き合ってひとしきり泣いた。
「自らの過ちを潔く認める。それが男伊達というものぞ」

そのとき、場違いに明るい声が広間に響いた。
「おおい! みんなー、職人食堂からの差し入れだぞ!」
ミスリル銃士隊のナジだ。なにやら巨大な平底の箱を抱えている。
箱を下ろせば、そこには東方伝来のライス料理・粽がぎっしりと並んでいた。
まーた、こき使われてんのかよ、と銃士仲間から野次が飛ぶ。
憮然とした顔になったナジを見てみなの顔に明るい笑みが広がった。

シノは粽をふたつ取って兄に渡してやった。わあいと一転して顔を綻ばせた兄だったが、傍らの妹の視線に気づいた。
「んっ」と声にならない声を出してひとつを妹に渡す。妹がぱっと顔を明るくする。
シノが頷いた。
「そうだ。それでよい」

こうして今年も練武祭が始まった。


Story : Miyabi Hasegawa
Illustration : Mitsuhiro Arita

「練武祭」の参加方法

1、以下のエリアにいるMoogleから「燻竹刀」を受け取りましょう。
南サンドリア(J-9)/北サンドリア (D-8)
バストゥーク鉱山区(I-9)/バストゥーク商業区(G-8)
ウィンダス水の区(北側)(F-5)/ウィンダス森の区(K-10)

2、「燻竹刀」を装備した状態で以下のエリアにいるMoogleに話しかけ、燻竹刀に「破魔の術」をかけてもらいましょう。
西ロンフォール(I-6)/東ロンフォール(G-6)/ラテーヌ高原(J-8)/ジャグナー森林(I-8)/バタリア丘陵(K-8) /北グスタベルグ(L-8)/南グスタベルグ(L-8)/コンシュタット高地(I-6)/パシュハウ沼(K-6)/ロランベリー耕地(K-5) /西サルタバルタ(J-8)/東サルタバルタ(G-11)/タロンギ大峡谷(I-6)/メリファト山地(E-5)/ソロムグ原野 (E-5)

3、みんなで協力してゲンジ甲冑を着込んだ何者かを捜し出し、やっつけましょう!
 敵が放つウェポンスキルを燻竹刀のエンチャント「邪気滅却」で防げば防ぐほど良いことがあるかも!?

4、見事勝利の暁には、敵を倒したポイントに「???」が出現します。
 「???」に燻竹刀をトレードしてみましょう。報酬として名刀?が手に入るかもしれません。

破魔の術について

・破魔の術をかけられると、レベルが1に制限され、代わりに移動速度が上昇します。
・破魔の術の効果中は、街の外を徘徊するモンスターに攻撃できなくなります。
 しかし、モンスターから襲われることもありませんので、ご安心ください。
・エリアチェンジやログアウトを行ってしまうと、破魔の術は消えてしまいます。

開催期間

練武祭は2011年4月28日(木)17:00頃より、5月10日(火)17:00頃までを予定しています。