ブレイジングバッファロー (2011/09/13)

牛追い祭りの準備でわがMHMUも大忙し。モウ大変クポ! 牛だけに!

……そんな目で見ないでほしいクポ。

冒険者さんたちがいっつも勇敢に牛を追っている姿を見て、ボクたちもこのイベントを開催してよかったって思ってるクポよ。

今年も頑張って牛たちを追ってほしいクポ!

ん? 
あれれ? なんだか困った顔をして牛の周りをうろうろしている男の子がいるクポね?
どうしたクポ?

意気地なし。
そう呼ばれて、怒らない冒険者なんていない、とエドナアルは思うのだ。
まだ15だし、冒険者にもなったばかりだけど。

「そこまで言うなら、独りでやってみろよ!」
「楽勝だ!」

けれど──。
目の前で実際に母牛を見たときにエドナアルは言葉を失った。
でけぇ……。
独りで牛追い祭りに参加するなんて言わなければ、と既に後悔していた。
母牛の頭の高さはエドナアルの背を遥かに超えている。
灰色のごわごわとした毛に覆われ、自分の腕よりも太い角を頭の両側に生やした母牛は、襲ってはこないとわかっていても、震えがくる。
たたらを踏んで下がった足が枯れ葉を踏んでがさり。
自分で出したその音に自分で驚いてしまう。背筋がひんやりと冷たくなる。

「な、なんで、こんなに震えてるんだよっ!」
拳で自らの脚を叩いて気合いを入れようとして気づいた。違う。本当に地面が揺れている。振り返ったエドナアルの瞳に、自分に向かって突っ込んでくる野牛の姿が映った。

あっと思った次の一瞬には、もう自分の身体は空間を越えて飛ばされていた。
南サンドリアの街中だった。
間の悪いことに、ユナミもエディ・モディもレッド・ウルフもそこにいたのだ。
「ほう、もうお帰りか?」
「ブルマークシートは? おやおや、真っ白ですねぇ」
ユナミにまでくすりと笑われて、エドナアルの頭は真っ白になった。
「まだだ! まだ、これからなんだよ!」
踵を返して、ふたたびロンフォールの森へ向かう。目の奥が熱い。

エドナアルの背中の遥か後ろで、赤毛のガルカのモンクとタルタルの黒魔道士とヒュームの白魔道士の娘が互いの顔を見合わせて気まずそうな顔をしたことまで気づかなかった。

森の奥。
ふたたび母牛を見つけたけれど、どうしても威嚇されると腰が引けてしまう。
ところが、しばらくすると母牛の傍らにいた仔牛が自分に近寄ってきたのだ。
母牛の匂いがついてしまったのだろうか。
先に立って歩いてみると、ゆっくりと仔牛が後をついてくる。
「ようし……こっちだ!」

少しずつ、目指すモーグリのところまで来た。
だが、あと一歩。もうわずかというところで、仔牛を探しに来た母牛がエドナアルにぶつかってきた。慌てて身を捻る。角が革鎧をぎりぎりでかすり、はずみで小川へと落ちた。
ざぶんと、全身が瞬間、秋の冷たい水の中へ。
──しまった!
ここまで来て、とふたたび目の奥が熱くなる。

「何、やってるのよ! さっさとあがらないと風邪引いちゃうわよ」
えっ? この声は……。

濡れた髪を絞りながら川から上がったエドナアルが見たのは、自分の代わりに仔牛を引きつけて逃げないようにしてくれていた仲間たちの姿だった。
「みんな……」

「ここまで連れてきたんだろ。もうちょっとだ」
レッド・ウルフが言って、エディ・モディも頷いた。
「そうそう、おまえ充分すごいって」
「ほら、そっちから追って! チゴーに注意してね!」
ユナミの言葉に、エドナアルは「ああ」と答えた。

モーグリのところまで追い立ててブルマークをもらった。
仲間たちの晴れやかな顔を見渡しながら、エドナアルは思う。
結局、独りじゃできなかったけれど、それももうどうでもいいような気もする。

楽しい牛追い祭りはまだ始まったばかりなのだから。


Story : Miyabi Hasegawa
Illustration : Mitsuhiro Arita

開催期間

本イベントは2011年9月20日(火)17:00頃より、10月4日(火)17:00頃までを予定しています。

イベントについて

イベント期間中、以下のエリアに多数の野牛が出現します。野牛の習性をうまく利用してモーグリの近くまで誘導しましょう。まずは、以下のエリアにいるモーグリに話しかけ、詳しい事情を聞いてみてください。

西ロンフォール(I-6)/東ロンフォール(G-6)
北グスタベルグ(L-8)/南グスタベルグ(L-8)
西サルタバルタ(J-8)/東サルタバルタ(G-11)

レベル制限について

・イベント参加中は、レベルが75に制限されます。
・レベルが制限されている間はモンスターに攻撃できなくなりますが、モンスターから襲われることもありません。
・エリアチェンジやログアウトを行うと、レベル制限は解除されます。