自分が装備する武具を作りたい、友人に贈る手作りのプレゼントを作りたい、手に職をつけてひと儲けしたい……ヴァナ・ディールの冒険者たちが合成を始める理由はさまざまだ。
それぞれの想いを持って修行に励み、見事、師範階級になった職人たちはいったいどんな生活をしているのだろうか?

今回は、鍛冶職人のLさんにお話をうかがった。
ちなみに、鍛冶というと重厚な鎧に身を包んだ男性を想像しがちだが、Lさんは華奢なタルタル女性魔道士である。

――こんにちは、今日はよろしくお願いします。
   Lさんは鍛冶職人だそうですが、現在のスキルはどのぐらいですか?


「95です。100を目指して頑張っているところです」

――なぜ鍛冶の道を選ばれたのですか?

「もともと合成が好きで、鍛冶の道に進む前に全部の合成スキルを60まで上げてたんですよ。そこで、どの道を選ぼうか悩んだ末に、いちばん自分の役に立たなさそうな鍛冶にしました」

――珍しい理由ですね。

「私は黒魔道士なんですが、肉体派のジョブはレベル20ぐらいまでしかやってないので、武具の知識はほとんどなかったんです。鍛冶職人ってやはり自分で鍛冶製品を装備する人が多いと思うんですね。でも、自分で使わなければ、一歩離れて市況を見極められるんじゃないかしらって思って」

――なるほど。では、合成をするのはお金稼ぎという感じですか?

「そうですね。お友達に作ってあげる機会も多いですけど、私にとってはお金稼ぎというか生活手段というか(笑)」

――何を売って稼いでいるんですか?

「決まったものはないんですが、新米〜中堅冒険者向けの、ハイクオリティ品の武器防具がおもな商品です。競売所の出品状況を見て、誰も出品してないものを狙って作ります」

――ベテラン冒険者向けの装備品のほうが高くないですか?

「高級な装備品は確かに値段も高くて売れればお金になるんですけど、その分、素材も高いんです。失敗したときの赤字が痛いので、私はスキル上げ以外ではあまり作らないですね」

――材料調達はどうしてるんですか?

「採掘が好きなので鉱山で掘ってます。よく行くのはグスゲン鉱山。以前は街に近いツェールン鉱山がお庭だったんですが、サポートジョブでテレポを使えるようになってからは、グスゲン鉱山のほうが行きやすくなりました。黒魔道士ですから、道に迷ってもエスケプやデジョンがありますしね(笑)。鉱山でよく会う掘り師さんのなかには、私がデジョンIIをしてあげる代わりに、掘れた鉱石を安く売ってくれる人もいます。自分で入手するのが大変な素材は、買っちゃいますね」

――冒険者としてのレベルが高くないと、鍛冶の道を進むのは大変だと思いますか?

「資金があれば、冒険者としての腕前はあまり必要ないと思いますよ。バストゥーク所属ならギルドもあるし、鉱山も近いし、ラクだと思います。ただ、鍛冶の製品にはほかの合成スキルが必要となるものが多いんです。鍛冶スキルだけではインゴットや金属板などの素材ぐらいしか作れなくて、武器や防具を作るためには木工、彫金、革細工、裁縫のスキルが必要になってきます。各ギルドで昇級試験を受けたりすることを考えると、三国間を自由に歩けるぐらいの腕前はほしいですね」

――鍛冶の苦労するところはどんなところですか?

「素材がかさばるところでしょうか。インゴットに加工するのって鉱石を4つ使うんです。採掘するときは炎のクリスタルを持ち歩いて、インゴットにできるセットが集まったら加工するんですが、運が悪いとこのセットがなかなか集まらないんです。うまく揃ったときはうれしいですね。雀鳳楼で言うところの“ツモ”です(笑)」

――今まで修行に使ったお金と儲けたお金はどちらが多いですか?

「これは当然、儲けたお金。修行で使ったお金も多いですが、それ以上に、稼ぐための合成をまめにしています」

――こんなものを作りたい!ってアイテムはありますか?

「新しい装備品とかは思い浮かばないですね。そうそう、ギルドで浄化金属合成という技術を教えてもらったんですが、もっと使う機会が増えればいいなと思います」

――今まで合成したもので一番思い出に残っているものを教えてください。

「昨日、友人に頼まれて作った両手剣の“ナーガン”。アダマンインゴットを6個も使うんですけど、失敗したらどうしようって手が震えちゃいました」

――では、最後にメッセージをお願いします。

「鍛冶は根気が必要な合成だと思います。これから鍛冶を始めようという人は、ぜひ最初はつるはしを持って鉱山に足を運んで、自分の手で鉱石を集めてみてください。では、鉱山でお待ちしております(笑)」

――ありがとうございました。

一見おっとりしているLさん。だが、話を聞かせてもらううちに、生計を立てるため、まじめに鍛冶に取り組んでいる様子がひしひしと伝わってきた。華やかではないが、いい仕事をする……彼女の性格は、鍛冶の世界にぴったりなのかもしれない。

text by Takashi and Asami Watanabe 
Illustration by Mitsuhiro Arita