夜明け前にセルビナを発った私は、バルクルム砂丘で日の出を迎えた。そのひと時だけ、世界は圧倒的な黄金色に染まった。天上に神々の園があるというならば、こんなふうに目映い光に満ちているのだろうか。
しばらくの間、うろ覚えの道を進んだ。肌で感じられるくらいに気温が下がり、湿度が増してきた頃、緑に覆われた高原地帯にさしかかった。
そこは、ラテーヌ高原の南端だった。
古ぼけた地図を広げて眺めていると、水玉模様が点々と生まれては滲み、やがて地図を埋め尽くした。突然の雨は瞬く間に勢いを増し、草や木はいっそう深い緑色を呈した。
乾いた土地を旅してきたこれまでの数ヶ月間、どんなにこの雨に恋い焦がれたことだったか。
私は目を閉じて天を仰いだ。慈しみの雨が、焼けた肌に残されたバルクルムの陽光の記憶を静かに奪い去る。
突如、足元に衝撃が走った。発生源はかなり近い。耳を澄ますと、地響きに混じって人間の声が聞こえる。雨のせいで見通しは悪かったが、状況は容易に想像できた。
私は、まだ見ぬ声の主に叫んだ。
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