特集 生産者の素顔
3.刈り取る者


サルタバルタ以南の地域に赴くと、時おり草刈鎌を携えた者の姿を目にすることがある。

この地は温暖な気候で、繊維の原料となる植物が群生しているため、各地から織工が集まってくるらしい。

サルタバルタ地方の西端、獣人都市ギデアスの深部で、そのような織工の1人、Tialaさんと出会った。

彼女は、ある作品のために素材を集めているところだった。

裁縫の修行では、合成に失敗して高価な素材を無駄にしてしまうことも多い。

その点、自分で集めた素材ならば元手もさほどかからないから、失敗を恐れずに難易度の高い作品に挑戦できるのだそうだ。

「何より、自ら収穫した素材で裁縫の腕が上がっていくのが楽しみ」 写真

彼女は、そう話してくれた。

今、あなたが身に着けている服も、こうした地道な努力の結果、彼女のような織工が生み出した一着なのかもしれない。

収穫したばかりの植物を見せてくれたのは、同じく裁縫職人のLeikaさん。

ギルドショップなどで素材を調達しようとしても、十分な量を確保できないことが多いため、彼女は自ら草刈鎌を手に取ったそうだ。

店で購入するのとは異なり、収穫は確かに手間がかかる。その代わり、自国では流通していない貴重な植物を偶然収穫できて、その苦労が報われることもあるのだとか。

「冒険者の人生は、常に危険と隣り合わせ。神経をすり減らすことも多い中、草刈鎌で収穫すれば、辛いこともすべて忘れられる」

屈託のない笑顔でそう語るLeikaさんが丁寧に仕立てる服からは、きっと草原の薫りがするのだろう。
特派員:Myhal / Gilgamesh

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