鉱石や骨材を求める者たちは、つるはしを何本も携えて坑道や洞窟に入り、そこで幾晩も過ごす。
貴重な鉱物資源が眠ることで知られるグスゲン鉱山を訪れた時、その奥底で一心につるはしを振るうFoxさんに出会った。
この古い鉱山には、鉱石以外にもいろいろと“出る”という噂が昔から絶えない。しかし、彼はそんなことなど気にせず、冒険資金や生活費を稼ぎ出すために黙々と鉱石を探し続けてきたそうだ。
取材の間も、彼は休むことなく、つるはしを振り下ろし続けていたが、不意に先端に何かが当たり、その表情がにわかに明るく輝いた。
貴重な鉱物を掘り当てたのだ。
もちろん、常にこう首尾よくいくわけではない。
いくら掘ってもさっぱり当たらず、もう採掘などやめてしまおうと考えたこともあったらしい。
ところが、いざ街に帰って鉱石を競売所に預けてしまうと、苦労しただけの達成感を味わえるからだろうか、翌日には再び鉱山に足を運んでいるのだという。
そんなFoxさんは、今日もどこかの鉱山で、つるはしを振るっているに違いない。
取材に応じてくれたもう1人は、知的な髭をたくわえたAtlaさん。
冒険資金を調達できればと考え、採掘を始めてみたという彼だが、今や岩肌を見極め、狙った鉱石をかなりの確率で掘り出せるまでに成長したという。
彼はまた、鉱石の流通に関しても、研究を続けてきたそうだ。
その対象は、市場の動向、競売を通じたかけひきのノウハウ、さらには同業の冒険者たちの行動に至るまで、実に多岐にわたっていた。
すべては、苦労して掘り出した鉱石を少しでもよい値で売るための努力なのだろう。
「売れない鉱石は、ただの石」
そう語る彼の眼は、つるはしの先よりも鋭くヴァナ・ディールの未来を見据えていた。