特集 真龍ファヴニルに突撃せよ!
2.強行偵察

幸い私には、獰猛かつ強力なモンスターたちを討伐してきた頼もしいリンクシェル仲間がいたので、彼らに頼んで一緒に行ってもらえばなんとかなるだろうと高をくくっていた。

実際、仲間の間でも「そろそろファヴニル討伐にでも出かけたいね」という話が冗談交じりに出ていたので、喜んで協力してくれるのではと期待して、リーダーのPagou氏に話を持ちかけた。ところが、残念ながら氏の答えは「行きたいがまだ準備不足だ。すぐにというのであれば他の同じような活動をしているリンクシェル集団に頼んだほうがいいだろう」という素気ないものであった。

今思えば、この判断はもっともなものだった。しかし、予想外の答えに半ば裏切られたような気がしていた私は、なおも食い下がり、ついに彼の重い腰をあげることに成功した。

同時に、仲間たちの賛同も得られ、ファヴニルに関する情報の交換や、対龍戦術についての討議も行われるようになった。それにつれ、真龍調査行への士気も次第に高まっていく。

しかし、誰も真龍についての確かな情報を持たない状況では、いくら話し合ったところでらちがあかない。

ここは一命を賭する覚悟で、少しでも情報を得るために“龍のねぐら”へ偵察を決行すべきではないかと思い始めた矢先のことだった。

ボヤーダ樹の“古代グゥーブー”狩りの帰り、思いがけず、誰とはなしに「今から様子見がてら行ってみよう」ということになった。

そして、無謀にも何の準備もないまま、十数名の命知らずの冒険者たちは、ねぐらの奥へとおそるおそる足を踏み入れる。と、たちまち誰かが引き寄せられた。すわ、戦闘開始である。

初めて目の当たりにする真龍は、噂通り巨大で、そして凶暴だった。

恐怖ですくみあがって身動きがとれなくなる者、ファヴニルの吐く灼熱の炎に身を焼かれる者。一瞬にして、そこは修羅場と化した。
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それでもどこかに弱点があるはずと、みな賢明に思い思いの技を試みる。仲間の盾となって倒れたナイトには、すぐに蘇生措置が施された。

気がつくと、噂を聞きつけてやってきたやじ馬が、罠を張っていた蜘蛛に襲われて命を落としていた。ここはファヴニル以外のモンスターも強力で油断できない場所なのだ。

半日ほども戦った頃、突如ファヴニルが猛りだした。それ以上、戦闘を続けるのは危険だった。リーダーから、緊急脱出の指示が飛ぶ。

周辺にいた冒険者たちにも事前に緊急脱出することを通告できたため、巻き添えの被害を最小限におさえることができたのは幸いだった。

戦って分かったファヴニルの優れた能力のひとつは、驚異的な回復力だ。やっとのことで与えたダメージも、すぐに無意味になってしまうのだ。とても倒せる気がしない。

しかし、何の準備もなかったわりに、覚悟していたほど死傷者もでず、思いのほか長くやり合うことができた。そのため、私たちはファヴニルとの戦闘=即死という恐怖を拭い去ることができた。

帰還後、この経験を元に、討伐に参加できるメンバーで戦術が練られた。最大のポイントはダメージをいかにしてファヴニルに与えるか、だ。

そしてこの日、いよいよ決戦の日程が決定した。

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